生成AIの社内ルールは「会社のアカウント」と「利用規程」の2つで作る
社員が個人で契約したChatGPTなどの生成AIサービスを業務で利用している一方、社内での生成AI利用ルールが定められていない場合、大きく以下の2つの対応が必要です。
1つ目は、会社として生成AIサービスの法人契約・アカウントを用意し、業務での利用は会社管理のアカウントに統一することです。これにより、個人アカウントでの業務利用を原則として停止します。
2つ目は、生成AIの利用範囲や入力して良い情報、禁止事項、情報管理などを定めた社内の生成AI利用規程を整備し、安全かつ適切に利用できる環境を整えることです。
なお、Microsoft 365やGoogle Workspaceを利用している会社であれば、法人契約のアカウントはすでに用意されている場合があります。新たに契約を検討する前に、現在の契約内容を確認することが最初の作業になります。
本記事ではこの2つを整備する手順と、その根拠となる各AI提供会社の公式情報・公的機関の見解を整理します。
この記事の要点
論点 | 結論 |
|---|---|
最初にやること | 業務利用を法人契約のアカウントに統一し、個人アカウントでの業務利用を止める |
個人プランの学習オフ設定 | 学習に使われるかどうかだけが変わる 契約・管理・保持は個人のままなのであくまで法人契約アカウント整備までの暫定策 |
追加費用 | Microsoft 365 なら Copilot Chat、Google Workspace有料プランならGeminiが法人保護付きで含まれるため、追加費用ゼロで済む会社が多い |
法人契約で変わらないこと | データがサービス提供者に送られること自体は同じ 個人情報・NDA情報の扱いは自社で基準を決める |
規程の分量 | 5項目、A4で1〜2枚 |
法人プランとは何か — 個人プランとの違いを4社の公式情報で比較する
法人プランとは、会社が契約主体となり、管理者が社員のアカウントを発行・停止できる生成AIサービスの契約形態です。
主要なサービスではChatGPT Business / Enterprise、Claude Team / Enterprise、Google Workspace内のGemini、Microsoft 365 のCopilot Chatがこれに当たります。
個人プランとの違いは「学習に使われるか」だけではありません。誰が契約するか、誰がアカウントを管理するか、入力したデータがどれだけの期間保存されるかの3点でも差があります。
サービス | 個人プラン(無料・個人有料) | 法人プラン |
|---|---|---|
ChatGPT(OpenAI) | 既定で入力内容を学習に利用する。設定「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにすると以後の会話は対象外 | Business(2025年8月29日に Team から改名)・Enterpriseは既定で学習に利用しない。事業者向けの契約条件でデータが扱われる |
Claude(Anthropic) | 2025年8月28日の規約改定で、学習への利用を許可するか本人が選択する。許可すると保存期間5年、許可しなければ30日 | Team・Enterprise(Claude for Work)は改定の対象外。学習に利用しない |
Gemini(Google) | 既定でアクティビティを保存し、一部が人間のレビュー対象になる。レビューされた会話は削除しても最長3年保存される。保存をオフにしても72時間は残る | Google Workspace内のGeminiは学習・人間レビューに使われない。Workspaceの契約とデータ保護の範囲内で処理される |
Copilot(Microsoft) | 個人のMicrosoftアカウント(Outlook.comなど)でサインインしたCopilotは、Microsoftの一般消費者向け規約が適用される | 職場アカウント(Entra)でサインインするとEnterprise Data Protectionが適用される。学習に使われず、監査ログの対象になる |
4社とも法人プランでは入力したデータが「モデルの学習に使われない」設定が既定となっており、社員が誤って変更することもできません。一方で個人プランの場合、OpenAIとAnthropicは利用者が自ら設定・選択する必要があり、Googleでは会話の保存や担当者による内容確認が既定で有効になっています。
個人情報保護委員会は2023年6月2日、事業者が個人データを含むプロンプトを入力する際、サービス提供側がそのデータを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう注意喚起を行いました。
法人プランを活用することで、企業としてこの安全要件を確実に満たすことができます。
よくある質問
個人アカウントのChatGPTで「学習に使わない」設定をしていれば、会社のルールは不要ですか?
- 不要にはなりません。学習オフ設定が変えるのは入力内容がモデルの学習に使われるかどうかだけで、契約は消費者向けのまま、設定の確認や解除は本人任せ、会話履歴も本人のものです。 会社が管理できる状態にするには法人契約が必要で、学習オフ設定は移行期の暫定策と位置づけます。